愛する妻への手紙

最初の手紙から読んでください。http://familin2006.hatenadiary.jp/entry/2014/11/25/093359

74通目、calling

君がいるなら

戻って来よう

いつでもこの場所へ

 

B'z 『calling』より

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

ここ数ヶ月で、ぼくは気付いていました。

 

ぼくにあなたを裏切ることはできない。

 

内心が別の女性を希求していることがすでに裏切りだと指摘されれば、

そこに反駁の術はなく、

もしあるとすれば、

そもそも「すでにそうだったぼく」をあなたは好きになったのでしょう、という、

余計に自分を窮地においやるような幼稚な言い訳だけです。

 

「裏切りとは何か」という哲学はあまりに深く難しいので、

いったんそれは停止し

裏切りとはあなた以外の女性を具体的な行為でもって愛すること

とシンプルに定義したい。

 

ぼくにあなたたちを裏切ることはできません。

 

ぼくは他人が傷付く瞬間に対し、あまりにも臆病です。

あなたへの愛情は、たしかに今もあるけれど、

それに匹敵するだけの臆病も相まって

ぼくはあなたを裏切らないのです。

 

自分には守るものがある…という、

英雄めいた自覚が生まれつつあることも

いま、あなたにメッセージしたい。

 

ぼくはあなたを裏切らない。

 

ぼくにあなたを裏切ることはできない。

 

そして、

その自覚に安堵を感じている自分。

あなたを傷つけることができなくてよかった、という、

不可思議な安堵を感じます。

 

安定という心が本当に求めるものに、

この身が近づいているのを感じます。

 

もう、この手紙は不要なんじゃないか、

デジタルの海にこの手紙を放流するというリスクは

そろそろ必要ないんじゃないか

 

そんな幸福な自問をしていたさなか、

 

ぼくの身にたった今起こったことが

「そうじゃないかもしれない」とつぶやくのです。

 

たった今ぼくの身に起こったことは、

思い返せばぼくの無自覚のまま

たぶんほとんど毎日ぼくの身に起こっていました。

 

今日、先ほど、

ぼくはふとんをかぶりめをつむったとき、

ぼくの脳内にあのひとの名を呼ぶ声が聞こえました。

ぼくの声で。

 

ぼくは、頭の中であのひとの名を呼んでいたのです。

いつも。

 

思えば、ぼくがいちばんに好きなのはもしかするとあのひとかもしれないと

自覚を持ったひとつのきっかけは、

あなたとの行為中に頭の中であのひとの名を呼んでいた瞬間にありました。

 

ぼくはかつて、

あなたの声を聞きながら、

あなたと汗を混じらせながら、

あなたの右足と左足の付け根にあるかすかな隙間に

ぼく自身の先端を出し入れしながら、

あなたのなかでぼくは

あのひとの名を呼んでいました。

 

しばらくなかったはずのそんなことが、

ふとんをかぶった瞬間に

ごく小さな声で

ぼくの脳のなかで再び起こったのです。

 

…完全なる無意識の裡に。

 

恐怖を感じます。

もはやあなたたちはぼくにとってかけがえのない宝物です。

そんなあなたたちを

傷つけるという行為に走る可能性を

ぼくは脳内の小さな声に

感じたのです。