愛する妻への手紙

最初の手紙から読んでください。http://familin2006.hatenadiary.jp/entry/2014/11/25/093359

60通目、新しい出会い

 

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愛してると君が言う

口先だけだとしても

たまらなく嬉しくなるから

それだけが僕にとって真実

Mr.Children 「Any」より

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妻へ

 

初めてパソコンから手紙を書きます。

「シークレットウインドウ」なるものを使っているので、履歴からこの手紙の存在を知られることはないでしょう。

しかし、「愛する妻への手紙」というタイトルでWEB検索すると、検索結果にはこの手紙がいちばん上位に来るようになりました。書き始めた頃はそうでなかったのに。

何かの手違いであなたがこの文章を目にすることになったら、きっとあなたを危機的な感情にさせるに違いなく、そしてそれはそのまま、ぼくとあなたの関係を危機的な状況に差し迫らせるに違いないはずなのに、ぼくはこのデジタルな手紙を書き続けています。

いったいいつまで、ぼくは覚悟の曖昧な日々を送るのでしょうか。

万が一、ぼくが最後に自死でもしようものなら、この手紙も夏目漱石の作品よろしく、多少は文学的事件として格好がつくかもしれませんが、もちろんぼくはそのような結論は絶対に出しません。ぼくにそんな意志力がないことと、そして、倫理的にそれをしてはいけないと心につよく刻んでいることは、あなたもよく知っているでしょう。

 

さて、昨夜のあなたとのやりとりに、ぼくは久しぶりに心に安寧というか、満足というか、そんな気持ちを胸に抱きました。

そのやりとりとは、きっと世のパートナーズにおかれては、ごく日常的なものなのでしょうが、ぼくには久々に思われたのです。

その感情の根源をたどると、自分が常に新しい出会いを求めているということと切り離せないような気がしてきます。

 

これは持論ですが、男性という生物は、常に新しい女性との出会いを求めています。新しい女性と、初めてのSEXをして、自らの種をできるだけ広く残すというのが本能です。これは女性の持つ本能と、そしていま人間が作り上げた文化や社会制度とは相反するものです。それをどう消化するかは個人の問題であるとして、

 

ぼくはあなたと結婚しているという現状と、できるだけ多くの女性に出会ってみたいという本能を中間地点で消化するために、あなたと新しく出会い続けたいのだと思います。

できるだけ新鮮な気持ちで毎日あなたに接したいと思うし、おじさんとおばさんになっても、初々しいふたりでいたいのだと思います。

 

そうであることは、とりも直さず、あなたを新しく好きになることを繰り返すということです。記憶喪失でもあるかのように、昨日と同じはずのあなたに、新しい好きという感情を喚起させ続けるということです。これは互いにとても難しいことでしょう。ぼくたちに限らず、恋人や夫婦というのはある一定の期間のなかで、ひとつのルーティーンが出来上がっていくものです。予定調和といってもいいかもしれません。それは新しさからは遠ざかろうとする動きです。長く関係を続けるふたりは、どうやって、お互いを新しく好きになり続けたらよいのだろう。

 

きっと、何かひとつの魔法のような公式があるわけではありません。

勉強でも仕事でもそうですが、問題を解決するための「必殺技」的なものは皆無ではないものの、少なくともそういうふれこみのものには慎重に向き合わなくてはなりません。

恋愛や結婚のような相手のあるものならば、なおさらでしょう。

 

しかしながら、基本のきのようなものがあるのも事実だと考えます。

 

あなたにぼくが好きだと言い、あなたがぼくにわたしも好きと返す。

 

こんな何気ない、ほんの10秒くらいの小さなやりとりに、ぼくがとても幸福な何かで胸を満たしていたことを正直に伝えます。

 

あなたを新しく好きになれるようあなたの細部に目を遣り、

あなたを新しく好きにさせられるよう工夫を凝らすこと、

それだけがぼくたちを瑞々しくいさせると思います。

 

ここで手紙が終わるとキレイですね。

しかし、たいていものごとにはA面とB面があります。

あるいは、立体的であります。

矛盾しそうないくつかが、同時にひとつの個体に去来するということが、世の中ではわりと頻繁に起こっているとぼくは認識しています。

たぶん、真実だと思います。