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愛する妻への手紙

最初の手紙から読んでください。http://familin2006.hatenadiary.jp/entry/2014/11/25/093359

40通目、切なくつらく甘い

妻へ

正直に告白して、先日の日曜日に横浜へ遊びに行ったときに、ぼくの心が呼ぶのは四六時中あのひとの名でした。

ぼくにとって切なくつらく、甘い響きをもったその名を、最近は申し訳なさをもって想うようになりました。

それは無論、あなたとその間の子への申し訳なさです。

子はかすがいという言葉を、ぼくはこれまで前向きな意味に捉えてきましたが、そういう場合ばかりではないのかもしれません。

もし大切なわが子が生まれていなかったら、ぼくはこの薄ら暗い感情をあなたに隠さなかったでしょう。

互いの愛情ではなく、わが子によってつながれる関係が、その家族にとって幸か不幸か。それは、全てが終わってみないとわからないことではあります。終わったときに、ああよかったと思える一縷の望みにかけ、今を生きています。

一方、ずっとぼくの血管の中を流れる後悔の奔流は、いま鼓動とともにその流れを加速させています。身体があらぬほうに目覚めるようです。

ただひとつあなたに伝えたいことは、ぼくがいま抱いている後悔は、決してあなたに向けられたものではないということです。ぼくはあなたを尊敬し、好いています。あなたを選んだことを後悔しているのではないのです。では何を…ということの答えは、言うまでもないことでしょう。そして答えを探る意味も、あなたにはないことでしょう。結局それはあなたを喜ばせないと、ぼくは知っています。後悔を抱く限り、あなたは真に幸せであったとは言えないのです。

それなのにぼくは、この後悔の念を、切なくつらく甘いと言って、つまりは青春の象徴だと呼んで、手放そうとはしません。

もしかしたらぼくは、どちらの現実でもなく、ただこの後悔に浸るという幸福を選んでいるのかもしれません。
妄想のなかに生きようというのです。

哀しい人間だと我ながら思います。