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愛する妻への手紙

最初の手紙から読んでください。http://familin2006.hatenadiary.jp/entry/2014/11/25/093359

10通目20141202恋慕について

妻へ

おそらく普通の夫婦としての反応なのだとは思いますが、ぼくたちは、お互いを恋うということがなくなったように思います。

あなたに触れたいとか、キスをしたいと思うことが、いやもっと言えば声を聞きたいとか話をしたいとか、そういう基本的で精神的なものが、ぼくたちの間から失われつつあります。

お互いに歳を取るなかでの、それは自然のなりゆきなのだろうか。
たとえばぼくたちがセックスをしなくなったのは、世間的な標準なのだろうか。

そうなのであれば、ぼくはむしろ嬉しいのです。ぼくたちに起こった変化が、どのカップルにも起こることなのであれば、ぼくは誰と結婚しても今の状態を迎えたということなので。つまり、あなたのことを愛していない証左にならないので。

そうであればいいのです。
そして、そうである可能性も高いと思っています。あなた以外の誰と番っても、今ぼくが恋うその人と一緒になったとしても、こうなっていた可能性はある、と。
しかし問題は、ぼくがこれでいいとは思えていないことです。

セックスレスという言葉がわざわざ存在しているのは、その事象が夫婦の存続に関わる重要な概念だからでしょう。
あるときまで自然に誘い合って行えた行為が、あるときから自然には行えなくなりました。ときには行為に対する疎ましささえ、それぞれが抱いたこともあったと思います。

もはや自然のなりゆきに任せることはできないのだと悟り、ある種の危機感のような思いのもと、セックスをしようと直接的な表現で誘ったこともあります。その返事をスマホで待つ間、付き合い始めのデートを待つときのような、初々しい鼓動がありました。あなたがいいよと言ってくれたとき、その夜を迎えるのに、待ちきれない思いすら抱きました。しかし、そのように明確に言葉に発してもすれ違うことがあり、関係性を遡らせるためにはかなりの努力が必要なのだと悟りました。

そして、今ぼくたちが恋い合えていないということを、はっきりと認識しました。

お互いをかけがえのないものとは思っていると思う。少なくとも、ぼくはあなたをそう思っています。あなたと、たくさんの経験と感情を共有してきました。あなたが相手だから気兼ねない接し方ができます。あなたの優しさに感謝もします。そして、一緒に新しい命を育てていく今の時間は、ぼくにとって幸せとしか言いようのないものです。

互いを求め合う感覚を、ぼくは取り戻したいのかもしれません。その女性になら恋慕の感情を持てると思っていることが、錯覚であると願いたい。しかし、永い間消えないこの思いが、どうやって終着するのかを想像するとき、耐えきれない切ない思いに襲われるのも事実です。

ぼくたちは、恋慕を取り戻せるでしょうか。
努力したいと思っています。